瓦屋根の主な劣化症状とメンテナンス方法について解説

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瓦屋根の主な劣化症状とメンテナンス方法について解説

2024年5月21日

瓦屋根は日本の伝統的な屋根材として知られ、その優れた耐久性と長寿命が特徴的です。

ただし、永久的に使用できるわけではなく、特に瓦を固定する漆喰やコーキングは時間とともに劣化が進んでいきます。

この記事では、瓦屋根に見られる劣化の兆候と、適切なメンテナンス手法についてご説明します。

瓦屋根の劣化の主な原因について

瓦屋根の劣化は、主に瓦の位置ずれや破損、建物内部への雨水侵入などの形で現れます。これらの問題の背景には、いくつかの重要な要因があります。

瓦自体の経年劣化と物理的損傷

瓦屋根は他の屋根材と比較して優れた耐久性を持ち、特に粘土瓦は50年以上もの長期使用に耐えます。ただし、自然劣化は避けられず、定期的な点検が必要です。

また、台風などの強風や飛来物による突発的な損傷も発生する可能性があります。このような物理的な損傷は、屋根の保護機能を著しく低下させる原因となります。

接合部材の劣化による影響

瓦の固定には漆喰やコーキングが使用されますが、これらの接合材料は瓦本体よりも寿命が短いという特徴があります。漆喰は約20年、コーキングは約10年で交換が必要となります。

これらの部材が劣化すると、瓦の固定力が低下し、ずれや脱落のリスクが高まります。

防水層と下地材の経年変化

瓦の下に設置されているルーフィング(防水シート)と野地板は、建物を雨水から守る重要な役割を果たしています。これらの部材が正常に機能していれば、多少の瓦の不具合があっても雨漏りを防ぐことができます。

しかし、これらの下地材も時間とともに劣化し、特に雨水の浸入が多い箇所では劣化が加速します。下地材の劣化は瓦の支持力低下や雨水侵入の原因となり、建物全体に深刻な影響を及ぼす可能性があります。

▷ 屋根のルーフィング(防水シート)とは?ルーフィングの役割と種類について解説

瓦がズレてしまった場合のメンテナンス方法とは

瓦屋根の維持管理には定期的な点検が欠かせません。特に瓦のズレや漆喰・コーキングの状態を注意深く確認する必要があります。

早期発見できれば修繕も比較的簡単で、費用も抑えられます。一方で、放置すると問題が深刻化する可能性が高くなります。

以下では、瓦のズレや破損が見つかった際の具体的な対処方法をご説明します。

瓦を元の位置に設置しなおして固定する

台風などで瓦が移動しただけで破損がない場合は、正しい位置への再設置で対応可能です。

しかし、周辺の漆喰やコーキング、さらにはルーフィングや野地板に劣化が見られる場合、単純な再設置では雨漏りや再度のズレを防げません。

そのため、瓦の再設置前には下地材の状態を入念にチェックし、必要な補修を行うことが重要です。

瓦や下地を部分的に補修する

限られた範囲での瓦のズレや破損、また下地材の部分的な劣化の場合は、該当箇所のみの補修で対応できます。

この方法は局所的な問題に対して効率的ですが、広範囲に及ぶ損傷や深刻な劣化がある場合は適していません。

飛来物による単独の瓦の破損などでも、新しい瓦の設置前には必ず下地の状態を確認しましょう。

瓦の葺き替え工事を行う

広範囲の瓦のズレや破損、多数の瓦の劣化、下地材の著しい劣化が見られる場合は、全面的な葺き替えが必要となります。

この工事では、既存の瓦屋根と下地材を完全に撤去し、新しい材料で一から施工し直します。

最も確実な改修方法で長期的な耐久性も期待できますが、工期と費用は最も大きくなります。

撤去・処分費用に加え、選択する屋根材によっても総額は変動するため、複数の業者から詳細な見積もりを取ることをお勧めします。

屋根瓦ごとのメンテナンス手法と費用について

瓦屋根の修繕には、瓦の種類に応じて異なるアプローチが必要となります。

以下では、主な瓦の種類別に、適切なメンテナンス方法と概算費用をご説明します。

粘土瓦の特徴とメンテナンス方法

現在の瓦屋根市場で最も一般的なのが「粘土瓦」です。

自然素材である粘土を成形・焼成して作られることから、「陶器瓦」という呼び名でも知られています。

最大の特長は「耐久性が非常に高い」点です。

優れた耐久年数に加え、防火性、断熱性、防音性など、多くの面で高性能を発揮します。ただし、重量が大きいという課題があります。

この重量面の問題から、近年の耐震改修では、より軽量な金属屋根への置き換えを選択するケースが増えています。

粘土瓦の屋根改修には、全面的な「葺き替え」と既存屋根の上に新材を重ねる「カバー工法」の2つの選択肢があります。

葺き替えの場合、足場設置、既存屋根の撤去・処分、新規材料、施工などを含め、総額で100~200万円程度を見込む必要があります。

一方、カバー工法は既存屋根をそのまま活用するため、60~120万円程度と比較的経済的です。

しかし、カバー工法には制限があります。屋根全体の重量が増すため、金属など軽量な材料しか使えず、また建物の構造強度が十分でなければ採用できません。

セメント瓦の特徴とメンテナンス方法

セメント瓦は、セメントをベースに砂と水を配合して成型された屋根材です。

高い耐火性と耐熱性を備えていますが、防水性を確保するために表面塗装が施されており、この塗装の定期的なメンテナンスが重要です。

メンテナンスには主に「葺き替え工事」「カバー工法」「塗装」の3つの方法があります。

葺き替え工事とカバー工法は粘土瓦と同じ手順で行いますが、塗装工事には特別な注意が必要です。

セメント瓦は素材の特性上、塗装の劣化により防水機能が低下すると内部に水分が染み込み、構造的な劣化が進行します。

これは、セメント瓦自体に防水性がないため、表面塗装が水分の侵入を防ぐ重要な役割を担っているからです。

このような特徴から、表面保護用の塗料は屋根の耐久性を保つために不可欠な要素となります。

塗装工事の費用は使用する塗料の品質や種類によって変動します。

高品質な塗料を選択した場合、10~15年の耐久性を期待できます。

一般的な塗装工事では、足場設置・撤去、作業員人件費、塗料代を含め、50~80万円程度の予算が必要です。

まとめ

瓦屋根は日本の建築文化に深く根付いた伝統的な屋根材であり、その信頼性から今日も多くの建物に採用されています。

優れた耐久性を持つ瓦ですが、自然環境による劣化は避けられず、特に接合部の漆喰やコーキングは定期的な点検と補修が欠かせません。

瓦の位置が崩れると、修復作業は複雑で費用負担も大きくなる可能性があるため、早期発見・早期対応を心がけ、計画的なメンテナンスを実施することが賢明です。

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